患者さんに「今日はどこが一番気になりますか?」とお尋ねすると、「アゴが痛い」とお答えになる方がいらっしゃいます。
もちろん肩こりや腰痛を訴える方は多いですが、アゴの痛みで来院される方もいらっしゃいます。
「顎関節症 がくかんせつしょう」は、体の歪みにも影響してくることですので、詳しくお話したいと思います。
顎関節症とは「アゴが痛む」「口が開かない」「アゴを動かすと音がする」などの症状を言います。
もう少し細かく見てみると、
- 口を大きく開けたとき、指3本(人差し指・中指・薬指)を縦にして入らない
- アゴを開けるときに、カクンという音がする
- アゴを開けるときに真っ直ぐ開かない、左右にぶれる
- アゴの周りがじっとしていても痛い
- 食べ物を噛むときにアゴの周りが痛い、音がする
などの症状が起こります。
顎関節症はなぜ起こるのか、原因を見ていきましょう。
- 物を食べるときに片方で噛む癖がある
- 椅子に座るとき猫背の姿勢になる
- 横向き寝、うつぶせ寝
- 寝ながら本を読む、テレビを見る癖がある
- 長い時間の頬杖、しかも片方の頬ばかりで頬杖をつく
- 受話器の肩挟み
上記はあくまで一部ですが、このように顎関節症には様々な症状と原因があります。
私自身も姿勢や行動を振り返ってみると結構当てはまる気がします。
日常の何気ない動作などで、顎関節に負担がかかっているものなのですね。
なぜ、アゴを動かすと音(クリック音)が出てしまうのか
口を大きく開けるには下の顎(下顎頭 かがくとう)が前方に移動しなければなりません。
しかし、関節円板が障害物となって前方に位置している場合があります。その障害物である関節円板を乗り越えなければ口は開きません。
また下顎頭が前方に移動するには空間が必要になります。その空間である関節腔は、咀嚼筋(そしゃくきん)が収縮すると下顎を持ち上げ狭くなります。狭くなった関節腔において障害物となった関節円板を下顎頭が乗り越える時にクリック音が出るのです。
クリック音を減少させるには
クリック音は下顎頭が関節円板を乗り越える音ですので、乗り越えやすい状態を作ることが大事です。それには口を閉じる筋肉である咀嚼筋を緩めることです。咀嚼筋が緩むと関節腔が広がるので下顎頭の前方移動がスムーズになり、クリック音が減少します。
なぜ関節円板は前方に移動するのか
たとえば、片方で噛む癖があると左右の顎関節にかかる圧力に差が生まれます。この圧力の差が関節内に空間を作ります。空間は関節の不安定さを生み、その空間を埋めるためにアゴの筋肉が関節円板を前方に引くのです。このように顎関節内の圧力が均等でなくなる原因は他にもあり、横向き寝や、うつぶせ寝、重いカバンを片側の肩にかけたりしても起こるといわれています。
片側ばかりで噛むと首の筋肉も凝ってしまう
咀嚼するという動作は首の後ろの筋肉や首の側面にある胸鎖乳突筋などが関係しています。
咀嚼筋を含めこれらの筋肉は左右一対で存在しています。
たとえば、左側で噛む癖がある方は、左側の首の筋肉にも影響が出てしまいます。
アゴの歪みは体の歪み?
アゴが歪むと顔も歪みます。そして、体も…
たとえば、左向きで寝ることにより左の下顎に負荷を与えたとします。そうすると左下顎が歪むのですが、左上顎はその歪みを補うために逆の動きをします。交互に歪むことで真直ぐにしようと、左下顎が左に歪むと左上顎は右に歪み、顔の歪みが始まります。
このような状態になると首の骨にも影響が出てきてしまいます。
頭蓋骨を乗せている首の骨は顔の向きと同じ方向に動きます。しかし、同じ首の骨でも違う方向を向くものもありズレが生じます。この現象が起こってくると背骨のバランスが崩れ、体全体の歪みに繋がります。
アゴの問題は体の歪みに繋がるため、顎関節症も軽視は禁物です。
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